新しいインクの出は好調。快適だ。
ずっと茶色のインクだったので、気分転換に赤色にしようか迷ったが結局同じ色にした。
昔見たイギーの手帳、書いてから数日は鮮やかだったが…次第に変色したあの赤い文字は、さながら血を使って書いたようで怖い。
血みたいだ。といったら、彼はなんと言ったか。 覚えてません。なんて言った?
さて、ハウルがこの家に来た夜、今、三つのものが俺の家に残った。
あのポインセチアの植木鉢は、自分の部屋に運び飾ることにした。赤い。
魚のつまった缶は、まだ棚の中だ。ついさきほどまで、興味深そうに見ていたけど…まだだよ、ソーン。君の胃に収まるのはね。もう少し待ってくれ。
最後のひとつ、いや、一人?
先刻まで話していたが…今頃、来客用の空き部屋で寝ている事だろう。たぶん。
予想以上に、あの空き部屋は役に立つね。
こうして日記を書いている間にも、しみじみと思うのだが、彼と俺は過去などに重なる部分はあれど完璧にそうではない。当たり前だが。ハウルの考えを俺はまだ理解できず、俺の主張も彼にはすんなりとは通りそうにないんだ。重ねて言うと、当たり前だが。
もし、俺たちが仮にも一人であったならこうして考えたり、ぶつかる事もないのだろうけど……そうであって欲しかったとは思わない。
ハウル、君は,――~~~~へ____/ ̄ ̄ ̄`……(文字が曲がりくねる。その後は、意識の浮き沈みを表すかのように
不規則にうねり、急斜面を描いたり、跳ね上がった線が引かれた。
端まで到達したところで、空白をあけてしっかりとした文字が再び現れ)
……俺は、寝てたのか?
器用な事が出来るもんだ。しかし、書きかけの文章がひどいことになっている。
眠い…。久しぶりの感覚に従い、早々に寝ることにしよう。
とりえずこの屋根の下に居るひとへ、おやすみ、ソーン、ハウル。PR