彼女にうり二つで、彼女とは似てもにつかない。
他人のそら似のアルティメット。
名前は知らない。ただ、なんとなく気になっている。
眼を瞑ると瞼の裏側に見える、光のような極彩色――
名前を知らない彼女は、そのような形で俺の中に潜む。
カナラではない、カナラに似た誰か。
今度会ったら名前を聞こう。聞かなくてはならない。
名も知らぬ彼女がほんの少し笑った時に感じた感情を、
共に歩いていたあの時間を思い出さねば、名前を聞かねば
“彼女”が“彼女”に埋まってしまう。
サナトリウムめいた脅迫がのし掛かる。嗾けているのは、勿論、俺だ。
(おまけのように、ぽつりと彼女の都での用事が無事達成される事を祈った文が続く。)
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