hetare 1/12 水鐘の都

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2025-09-11

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1/12 水鐘の都

寒い、寒いと口で言いながら俺の足は外ばかりを歩いているんだ。

過去に怯えて、捕まりたくないから歩き出しているの？　
「　　　」が言った。さぁ、どうだろうね、としか。
寂しいからと熱を求めて彷徨っているの？
「　　　」は言った。さぁ、どうだろうね、としか。
よく分からない。でも、俺は外に出ている。それだけは分かるよ。
どうだろうね。君の質問に、俺はろくな答えを返したことはない。

さて、何と無しに始めた散歩の最中に出会ったご近所さん。
往診鞄の中は鈍器（になりえる書物）を詰めて、彼の中には口にはしない本音が詰まっているらしい。結局、彼のうちに秘める言葉というのは聞けずじまいだった。
あの晩、彼が何者かにかけられたという「嘘を取り払う呪い」がかかったままであったなら聞けたのかもしれない。けれど、本人の意思とは関係ない形で本音を知るというのも………やっぱり、あの呪いが解けていてよかった。

それに、伝える手段は、伝わる手段は何も言葉だけではない。
そう思うね。

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