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職業なりきりバトン

むかーしむかし。
という出だしで始まるぐらいに結構前にスイコさまから頂いたバトン。
時節的には、アジサイ花咲く露の刻…流石に職業なりきりバトン溜めて一周年を無事に迎える三ヶ月前で断ち切りたいと思います。

ベネディクト宛、職業「獣医」。
この最後の…きゅ、きゅんとくる台詞が難しいんだ(ごくり)
そして書き始めたら…なんか長くなってしまいました。プチ小説。
もはや、なりきりというよりifに近いです。

●職業なりきりバトン●

・指定されたキャラクターを指定された職業になりきらせる。
・衣服は勿論その職業に合わせたものを着用。
・最後に胸にきゅんと来るような台詞を言わせる(愛の告白など)



大海原をまたぐ船の出入り口、港から様々な異文化が流れ込み活気づく水鐘の都。
都に隣接した旧市街は、かつての栄光の姿の片鱗も残さずほぼスラム街と化していた。崩れかけた廃屋が並び、ひび割れた街壁が街を囲み、建物から刮げ落ちた瓦礫がゴミのように道に転がっている。ただ朽ちるのを待つ街だった。
そんな街灯ひとつまともに点かない廃れた街に、真新しい光が灯す場所が点々と残っていた。そのうちの一軒―――見てくれは、街の雰囲気から逸脱することはないが半壊や全壊してしまった悲惨な風景に馴染みはしない。かつて別の店の顔であったであろう錆びた看板に「Animal medical office《動物診療所》」と上書きされ、出入り口に堂々と鎮座していた。

扉をくぐると、すぐに仕切りの壁ひとつない大きな一つ部屋に繋がっている。時を経た古めかしい雰囲気は拭えないものの、今にも亡霊が出てくるような薄ら寒さはない。埃ひとつ舞い上がらないよう清掃された室内には壁際に多くの薬瓶が詰まった棚や、本を溜め込んだ本棚。窓際には愛用の机があり、ちゃんと診察台も設備されていた。機能をとうにやめた街にあるその建物は、十分に動物診療所として機能しており、中には医者もちゃんと詰まっていた。


そして、今日も誰かが扉を叩く。

時は月が高々と天に昇り、陽は裏側に回っている時刻。椅子に座りもせずに立った状態で読書に耽る医者の姿があった。そろそろ集中力が切れてきて気もそぞろになった頃、ちょうど誰かが診療所に入ってきたようだった。少し慌ただしい開閉音に、医者は入り口に視線を向ける。そこには、息を切らした客が突っ立っていた。
対する医者の男は、黒の眼帯、何か獰猛な動物の牙にでもかかったのではないかという大傷の跡を頬に残した風貌――威圧感すら与える特徴を兼ね備えていたが、残った垂れ目とへらへらと笑う顔には威圧感のへったくれもない。

半ば反射的に笑顔が浮かんだが、青い顔をした客の顔を見るなり、急いで読んでいた本を本棚にねじ込んで駆け寄る。挨拶もほどほどに飼い主の手の中のものを覗き込むと、小さな小鳥だった。しかし、明らかに様子がおかしい。羽毛を風船のように膨らませ、小さな体は痛みからなのか寒さからなのか小刻みに震えている。衰弱しきっているようだった。鳥を覗き込んでいた顔をあげて、こうなる前に何か可笑しかった事はなかったか訊ねたが、覚えはないという。

「けど、ずっとご飯を食べない?というより、食べられないような…奇妙な動きをするのか…。うーん、怪我もしてないし…おかしいな。ちょっと見せてくれないか。」

見る角度を変えたりしてみたが、外傷はみられなかった。客の手から丁寧に鳥をうけとると、その軽さに驚いて僅かに目を瞠った。ひとまず診療所の上にのせてみたが、普段している歩き方すら可笑しい。渋い顔のまま鳥を拾い上げると、餌を食べなくなった要因としてまず卵詰まりではないかと思い当たった。腹部が見えるように、鳥を仰向けにして指で触れてみたが卵が詰まっている様子はない。

「卵は…詰まってないみたいだな。となると…」

はて、医者は首を傾げる。診察台に置いてあったピンセット立てから一本ピンセットを抜き取ると、親指と人差し指で小さな頭を挟むように押さえ込んで、口の中もよくよく観察する。何かがあるはずなのだ。独眼を細め、一心に僅かな異変でも見逃さぬよう目を凝らしていると嘴に違和感を覚えた。

「あれ…なんか、変だな。なんだろう、これ。」

開かせた口の中にピンセットをつっこみ、微かに見える違和感をなんとか取り除こうとピンセットの先を動かした。さほど時間が経たぬうちに、カチン、と一際大きな音がたてて嘴から何かが転がり落ちる。診察台の上に転がり落ちたソレは―――小さな、砂利の粒のような石だった。医者は合点がいったという風に頷くと、鳥とピンセットを順に診察台に下ろすと、石粒を拾い上げて飼い主に見えるように差し出した。本当に小さな石だ。

「たぶん、何らかの形で…含んだこの石がちょうど嘴に挟まってしまって…上手く餌が食べられなかったんじゃないかな。餌を食べていないから体温がすっかり下がってしまって、羽毛を膨らませて耐えていたんだと思う。」

試しに餌を与えてみよう、と言うなり、ポケットから鳥用の小さな餌袋を取り出す。池の鯉に餌をやるような感覚で2本の指をつかい、診察台の上に餌をばらまくと、小鳥はせっせとその場で餌を食べ始めた。よほど空腹だったのか、脇目もふらずに食べている。それを見届けると、ようやく医者にも安堵の笑みが浮かんだ。

「よかった、ちゃんと食べているね。これでもう心配ない。野生の小鳥は、こういった事で命を落としてしまうんだろうなぁ…。ちょっと何かが嘴に挟まっただけでも、こうやって食べられなくなってしまうから。」

診察台の餌をすぐさま平らげた鳥の食欲に、目をゆるく細めて新たに餌を追加する。餌をやる手を一旦休めると、隣に立つ飼い主の顔を見て最初の時に浮かべたへらりとした不抜けた顔で笑った。

「また、何か様子がおかしかったら、些細な事でもいい。昼夜問わずに此処においでよ。夜中だろうが、早朝だろうが、患者《君》が来たその時が開店時間だからね。」




きゅん…?きゅん?ってなんですか、それ、きゅん?(壊れた

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