髪が随分と伸びていた。
顔がほんの少し大人びたものになっていた。
以前あった時より、ささやかながらも彼女は大人に近づいている。
その成長を喜ばずにいられようか。いいや、きっといられまい。
人間は決まった大人という形がない。体ではなく、精神でなるものなので
一生「子供」のままの大人もいれば、幼い頃からもはや「大人」になってしまった子供もいる。カナラは、きっと大人になれるだろう。そして、いつしか……彼女に奇跡的な事が起これば、(彼女の魅力がどうだという話ではない。彼女を大事に思うが故に鉄壁となった男が二人いるのだ。)妻に、そして、母親になるのかもしれない。結婚式には、彼女が似合うと見込んだ礼服を着て参加しよう。
そして祝福をする。この世界で初めて知り合った人間の娘を。
彼女が何処に居ようと俺には関係ない。好きなところへ好きなだけ行けばいい。
しかし、彼女に仇なし、不幸にするような奴に対しては大いに関係がある。
彼女がもし望んだならば、俺はその力を振るうことに迷いは特にない。
だが、望まない限りはこの地でプリンを作っていよう。うん、それがいい。