約束していた命乞いの品物の納品日。
ヴェトリスを、人出が足りない時に手伝いにいく宿屋へと呼んだ。
結果は無罪判決、今のところは俺の首は繋がっていて、
こうしてペンをとり、いつもどおり日記を書ける時間に感謝をしよう。
俺の命はワンホールのチョコレートケーキのうち六分の一で救われ、(その後、彼女に全部手渡したのだが有罪無罪の判決はそこで打たれたのでそれとする。)晩餐の可能性を秘めた菓子はこのうえなく贅沢だったと言える。美味しかった。
ヴェトリスは裁縫も嗜み(あのティーコゼの刺繍の見事さといったら!)
菓子を作れる、あれのレシピをいつか教えてもらいたいと願ってやまない。
なんとも女の子らしいじゃないか。なにより母親の愛を受けて育った健全な子供。
今はその健全かつ献身的な愛が彼女の道となっているようだが…茨なのか宿命なのか、知るよしもなく。
ただ、どうかお幸せに。
神を心酔し信仰し、その目も手も心も、全てを神に渡してしまった聖職者。
いっそ潔癖すらある狩人になりそこなった彼女をよく思わない人間はいるだろう。
彼女の行為を裏切りと糾弾する声がかかりませんように。
彼女に感謝と尊敬の眼差しが注がれていますように。
と思う反面。
俺が出来る手伝いといったら、裏切りをさせぬために悪魔らしく振る舞い
感謝と尊敬を集めるために彼女の剣の錆になる事だろう。
俺はするかと言われたらしない。こうして、俺の願いと行動は乖離する。
ごめん。
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