(日記を綴る手元には見るも涼やかな菓子がひとつ。透明なゼリーの中に、時を止めたかのような鮮やかな薄紅のスイートピー。日記を書く手を休めて、嬉しげに眺めたら――再び、ペン先が紙の上を滑った。)
ヴェトリスから、お菓子が届く。
手紙に使う便箋から女の子らしいというか…ヴェトリスは、俺がこの世界で知る女の子の中で一番「女の子」らしい気がする。決して他の子達がそうでなかった、というわけでなく…なんだろう、俺が抱くイメージ的に? 彼女が尤も像に近いのだ。
さて、送られてきたお菓子ときたら…綺麗の一言に尽きる!
眺めているだけでも楽しい。始めて目にするお菓子だ。なんという名前の菓子だろうなぁ。彼女は俺の知らないお菓子を何気なく作って、あっさりと目の前に出すんだから敵わない。そして、この無骨な手で挑戦したくなる。
今度作ってみよう。
いやぁ、しかし、大の男がゼリーを眺めて日記を書くなんて奇妙な話だな。
奇妙なんてものじゃない。誰か見たら、俺の頭の心配をするんじゃないか?ってぐらいに、顔が笑ってる。しっかりしろ、ベネディクト。
いい加減、そろそろ食べよう。うん。(ペンを置く変わりに、スプーンを手にとって――)
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